2026年5月9日更新
私自身、中小企業のWeb担当者として「どうすれば結果を出せるのか」「お客様に本当に喜んでもらうには何が必要か」を長年考え続けてきました。その経験の中でたどり着いた結論が、「Web担当者こそ、経営視点でのマーケティングの知見を持つべきだ」ということです。
本連載ではこれまで「集客・受け皿・追客・分析」というWebマーケティングの具体的な戦術を解説してきました。現在、これらの多くはAIによって自動化・最適化されつつあります。しかし、AIに「自社が戦うべき市場」や「本当の強み」を定義することはできません。これからのWeb担当者に求められるのは、そうした上流のマーケティング戦略を描き、社内を巻き込んでいく力です。
本記事では、私の実体験をふまえて「中小企業のWeb担当者がどうマーケティング戦略を進めればよいのか」をご紹介します。
マーケティングとは何か?なぜWeb担当者に必要なのか

「マーケティング」という言葉は人によって解釈が異なりますが、この記事では次のように定義します。
「企業の持つ知財・資産・状況に合わせて、目標(売上など)を最大化するために行う施策の全体設計」
「Web担当者がそこまでする必要があるの?」と思われるかもしれません。しかし、Webサイトの改善も広告運用も、突き詰めていくと戦略なしに効果を最大化することは不可能です。
理由はシンプルで、会社全体として強みや差別化ポイントを共有できていないと、部署間に認識のズレが生じるからです。たとえば、営業部が「商品Aを強みBで売りたい」と考えているのに、広告や自社サイトでは「別の強みC」で訴求されていたら、売れるものも売れなくなってしまいます。Web施策と営業現場のベクトルを合わせるためにも、Web担当者がマーケティングの視点を持ち、会社全体に働きかけていく意義は極めて大きいのです。
Web担当者が主導するマーケティング改善・4つのステップ

ステップ1:企業の強みと状況を可視化・共有する(クロスSWOT分析)
まず取り組むべきは、自社の強みと弱みを客観的に整理することです。おすすめは「クロスSWOT分析」の活用です。自分一人で考えるのではなく、各部署から協力的なメンバー(できれば役職者)を巻き込み、複数の視点で洗い出します。
「うちには何もない」と悲観する必要はありません。「A社ほどではないけど、うちもそこそこできるよね」という程度で十分です。ここで言語化された強みが、そのままWebサイトや広告でアピールすべき最大の武器となります。
ステップ2:競合他社との関係を可視化する(STP分析①)
次に、2つの提供価値を軸にした「ポジショニングマップ」を作成し、競合他社と自社の立ち位置を可視化します。これにより、競合がカバーしていない空白ポジションを発見したり、自社が勝てる差別化の方向性を見定めたりすることができます。
ステップ3:市場ニーズとユーザー属性を可視化する(STP分析②)
続いて「どの市場の、どのような属性のユーザーを狙うのか」を明確にして社内で共有します。ここで設定したターゲット像が、連載第2回でお伝えした「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」の土台となります。見込み客の解像度が上がることで、営業部門へパスした際の摩擦も減り、無駄なコストを削減できます。
ステップ4:具体的な施策に落とし込む(マーケティング・ミックス / 4P)
ここまでの分析をもとに、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販促(Promotion)」の4Pを整理します。この4つの観点が定まれば、「どんな広告媒体を選ぶべきか」「LP(ランディングページ)で何を語るべきか」が自ずと決まり、Web施策の実行がぐっとスムーズになります。
【現場のリアル】組織を動かす泥臭いアプローチ
理想的なフレームワークを並べましたが、正直に言うと、私自身もこれを最初から100%完璧に実行できたわけではありません。中小企業においてマーケティングを前に進めるには、論理だけでなく「泥臭い社内調整」が不可欠です。
経営層への提案は「外堀」から埋める
経営層との意識共有は欠かせませんが、いきなり社長室に乗り込んで「マーケティング戦略を変えましょう!」と直談判するのは危険です。一部署の独り歩きにならないよう、まずは取締役や部長クラスの方々と少しずつ対話の機会を作り、「Webで結果を出すには、全社的な強みの言語化が必要で……」と地道に理解者を増やし、外堀を埋めていくアプローチが現実的です。
現場の「エース社員」を味方につける
中小企業では、明確な戦略がないまま「現場の個人の力(エース社員)」で何とか乗り切っているケースがよくあります。属人的な状態はリスクでもありますが、逆に言えば、その「一番仕事ができる人」をマーケティングの取り組みに巻き込むことができれば最強です。組織の論理と、現場のエースの力が融合したとき、最大の成果が生まれます。
もちろん、変化を嫌がる人もいます。そんなときは完璧を目指さず、「今の環境でできる範囲のこと」をやり切れば十分です。
まとめ
- AI時代だからこそ、Web担当者が上流のマーケティング戦略(強みの定義やターゲット設定)を主導する価値が高まっている。
- SWOT分析で自社の強みを言語化し、Web施策の武器にする。
- STP分析・4Pを通じてターゲットと価値を明確にし、部署間の認識のズレ(Webと営業のギャップ)をなくす。
- 社内調整はいきなりトップに直談判せず、役職者の外堀を埋め、現場のエース社員を味方につける泥臭さが鍵。
- 100%の理想を追わず、今の環境でできる範囲から着実に実行する。