中小企業のリスティング広告運用について

どのような業種の企業でもWebサイトからの集客を行っているのであれば、リスティング広告運用は集客の要もしくは一部として欠かせない媒体だと思います。ここでは、リスティング広告とは何かという基本から成果を上げる方法までを紹介いたします。

まずリスティング広告とは?

リスティング広告とは、Google広告やYahooスポンサードサーチに代表される「検索連動型広告」と、GDNやYDNに代表されるディスプレイ広告のことを指します。どちらもクリック課金型広告なので、表示されてもクリックさえされなければ広告費は発生しません。ちなみにクリック課金型広告と対をなすのはインプレッション課金型広告で、こちらの課金型は表示された回数によって広告費が発生します。

前述の通りリスティング広告はクリック課金型広告のため、予算のコントロールがしやすい部類の広告媒体になります。また少額から始められる広告でもあるので、例えば月額10万円からスロースタートし徐々に成果を上げながら広告費を上げていくということが出来ます。

実際に表示される広告は、以下赤枠のような広告枠内に表示されるようになります。

検索連動型広告表示イメージ

この広告枠に表示されるためには、入札によるオークションで上位になる必要があります。
上位になるには、キーワードごとにクリック単価を設定するのですが、その設定金額や広告文章や広告オプション設定、広告をクリックしたときに着地するページ(ランディングページもしくはLPと呼びます)の質、それらとキーワードとの関連性などを元に決められます。
なので、クリック単価を多少高くしたからといって必ず一番上に表示される仕組みにはなっていません。

中小企業にとってのリスティング広告

中小企業にとってリスティング広告は扱いやすい部類の広告で、しかも効果も発揮しやすく費用対効果も高い広告と言えるでしょう。

なぜなら検索連動型広告は、顕在層向けの広告になります。自社のブランド名で検索したり、自社が属する業界名で検索したりと、すでにサービス利用もしくは商品購入というコンバージョンに近いユーザーを獲得できる広告と言えます。
よって、他の広告媒体と比べて結果を残しやすいとも考えることができます。

しかし問題は広告が表示される仕組みになります。
まずクリック単価の設定を高くすればよいわけではありませんが、いわゆるビッグワードはそれでも1クリック1,000円以上するものもあります。よって、予算によってはビッグワードを狙えない、あるいは狙っても少しのクリックだけで広告費を消化してしまうことになります。ここでも資本主義の原理のようなものは健在なのです。

大企業の場合は、そのビッグワードを狙いジャブジャブお金を投入するという方法もありかと思いますが、中小企業にとっての戦略としては月の広告予算との兼ね合いもありますが、あまり利口ではないと思います。

私は中小企業のような予算が限られる中で運用するのであれば、ビッグワードには費用対効果が見込める程度のクリック単価を設定しておきながら、ミドルワードやスモールワードのような競合がそれほど多くないところで成果を見込めるようにアカウント構成を設計(後述)し、運用するのがあるべき姿ではないのかと考えます。

リスティング広告におけるWeb担当者の役割

リスティング広告を運用する際にWeb担当者に求められる役割は、2パターンあると考えます。
それは協力会社を選定し、その会社をうまくコミュニケーションをとり成果を出すという外注パターンと、自らリスティング広告を運用し最適化を図っていくインハウスパターンの2パターンです。

インハウス(自社)での運用をおすすめする理由

結論から申し上げれば、インハウスパターンを私は推奨します。なぜなら協力会社、主に広告代理店になるかと思いますが、しっかりと選定しないとロクに運用の出来ない会社にあたってしまう可能性があります。
また優良な会社にあたったとしても、広告代理店である以上は手数料が発生します。手数料は私の経験上ですが、概ね広告費の20%です。安くて14%という会社がありましたが、特殊な事情があったので通常は20%と思っていたほうがよいでしょう。

例えば月に100万円の広告費を投じた場合、20万円の広告代理店手数料が発生します。インハウスパターンであれば、あと20万円分広告を出稿出来たことを意味します。
100万円であればまだ良いですが、手数料はパーセンテージなのでリスティング広告がうまくいき広告費を増額すればするほど、広告代理店へ支払う金額も上がっていきます。単純に1,000万円であれば200万円です。

また外部に任せると問題なのは、自社にノウハウが溜まっていかないことと、スピード感の違いがあります。
広告代理店は毎月レポートや報告を兼ねての打ち合わせを行ってくれますが、実際にどのような仮説を立ててどのような作業をしたかまではわかりません。また報告してもらっても、聞いているだけでは身につかないと思われます。

スピード感の違いについては、例えば急に決まった新商品を公開した際にすぐに広告を動かせるか、思いついた改善策を実行する際にもタイムラグが生じます。また改善策についても、小さなものに関してはわざわざ協力会社に連絡をする手間を考えると、この改善策は保留でいいかな?といった感じになりがちです。

以上のように、広告代理店手数料・自社にノウハウが貯まらない・スピード感に違いがあるという3点から私はインハウスでの広告運用が良いと考えます。
またリスティング広告をインハウスで運用できる知見を得られれば、その他の広告で広告代理店を頼りにする際に同じレベルで会話ができ、要求する内容のレベルも高く出来ます。

インハウス(自社)での運用する際のデメリット

インハウスでリスティング広告を運用する場合のデメリットですが、まずは運用できる人材を確保もしくは育てる必要があるという点です。ここではWeb担当者がいるという前提なので、新たにインハウス広告運用者を雇用するのではなく、Web担当者を広告運用も出来る人材に育てるべきだと考えます。

人材を育てるということは、ある程度参考書などで勉強してからでも、実践を始めから投資する広告効果を回収出来るようになるまでは時間がかかることを理解しなくてはいけません。ただ長期的な視点でみればすぐに投資した金額は回収できると私は考えます。

もう1つのデメリットは、せっかく育てた広告運用者が辞めてしまった際に、何も社内共有していないとまた1からやり直しになってしまう点です。ただここは単純でノウハウの社内共有をすればよいわけです。もしくは、広告運用は2人体制にするのもよいでしょう。もし広告運用者が辞めても問題ないような体制を作ることがこのデメリットを解決する方法と考えます。
なので、自社に対する愛着などにもよりますが、Web担当者(貴方)の方はそういったデメリットを上司に説明して、バックアップ体制づくりを怠らないことをおすすめいたします。

リスティング広告で成果を出すポイント

私はリスティング広告で成果を出すには、次の5つのポイントをクリアしていく必要があると考えています。

ユーザー分析を前提としたLPO

別の記事でカスタマージャーニーマップやペルソナについて言及したことがあると思いますが、その成果に基づいたランディングページを作成することが必須事項です。
ここで言うランディングページとは、広告用に最適化した1ページ構成のページのことを指します。
(LPOとは、Landing Page Optimizationの略で、要するにランディングページ最適化を意味します)

このLPOをしっかりと行っていないと、いくら上手くリスティング広告からアクセスを獲得してもコンバージョン、つまりお問い合わせや商品購入をしてもらえないということになり、結果費用対効果が悪くなります。
リスティング広告の運用は、広告管理画面の中だけではないということを頭に入れておきましょう。

リスティング広告のアカウント構成

リスティング広告の管理は、キャンペーン・広告グループという単位で分かれています。
一番上位レベルがキャンペーンで、その中に複数の広告グループが存在します。そして広告グループごとにキーワードの出稿や広告文の設定などが行えるようになっています。

家庭教師のリスティング広告を運用するという前提で例を上げると、
キャンペーンは各県ごとに作り、広告グループはビッグワード、ミドルワード、スモールワードに分けるといった形です。このアカウント構成の作り方カンタンに説明するのは難しいので、リスティング広告の参考書等で勉強する必要があると思います。

キーワード・広告クリエイティブ・広告オプション

どのようなキーワードを出稿するのかは、ユーザーをどの程度理解できているかにかかっています。コンバージョンに近いユーザーはどういうキーワードで検索するだろうかというのを考え、設定する必要があります。

広告クリエイティブに関しても、同じことが言えます。どのような広告文章ならばユーザーにとってクリックしたくなる文章かというのを考えて設定する必要があります。この広告文章は前述したランディングページと合致している必要があります。
考えてもみてください。例えば安さを売りにした広告クリエイティブでアクセスしてきたユーザーを待っていたページが、品質を売りにして価格も高かったらコンバージョンには至らないと思います。こういった点にも注意しながら広告クリエイティブは作成する必要があります。

最後の広告オプション設定は、広告が表示される際に電話番号を表示したり、別途訴求する文言を追加したり出来ます。これは広告の表示順位を決める要因にもなっているので、広告オプションの設定は可能な限りしっかりと行いましょう。

入札戦略

一昔前までは、手動のみで人間がいかに費用対効果が良くなるように出来るかが鍵でしたが、今は入札戦略をある程度自動化出来るようになっています。例えば5,000円で1CVを取るように設定すると、AIが自動的にキーワードごとの入札価格を設定し、最適化していきます。ただ、AIも始めからうまく出来るわけではなく、学習する時間を必要とします。
また個人的な見解ですが、まだ完全にAIだけに任せる領域には達していないと考えています。なので、自動化するのは問題ないですが、経過を見ながら修正すべき点を見つけ出すのはまだまだ人間が行う必要があると思います。

また入札戦略を自動化するのにも、月間でコンバージョン数が○件以上など入札戦略ごとに条件があるのも注意点です。

すべてをPDCAする

Webの世界は、すべてがトライ・アンド・エラー。PDCAを回さなくてはいけません。
うまく行かなければ、上記のLP・アカウント構成・キーワード・広告クリエイティブ・広告オプション・入札戦略どこかにもしくは複数に間違いがあると考えられます。
うまくいったとしても、さらに良くするにはどうすればよいかを考える必要があります。
リスティング広告周りにも様々な便利なツールが存在しますので、それらを駆使して効率よく時短で改善していきましょう!

リスティング広告運用についてまとめ

  • リスティング広告とは、Google広告やYahooスポンサードサーチに代表される「検索連動型広告」と、GDNやYDNに代表されるディスプレイ広告のことを指します
  • 入札によるオークション制で、上位になるには設定クリック単価や広告クリエイティブ、ランディングページの質などが関わってくる
  • 月の広告予算によって取るべき戦略は異なる
  • 広告の運用はインハウス(自社)での運用をおすすめする
  • リスティング広告で成果を出すポイントは、LPO・アカウント構成・キーワード・広告クリエイティブ・広告オプション・入札戦略
  • PDCAを回し徐々に最適化を図っていく