中小企業のIT化(CRMの導入について)

中小企業のサイト集客(集客の考え方と集客媒体)」で言及しましたが、Web上で完結しないビジネスモデルの場合、お問い合わせが成約に繋がったのかまで追うシステム、CRM(Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント)の略語)が必要になります。
なぜなら広告を出稿してお問い合わせを獲得した場合、どの広告からのお問い合わせが成約に繋がったのかを分析する必要があるからです。

本記事では、そのCRMについてと導入に際して気をつけることを解説します。

まずはCRMを導入する目的を明確にする

最初に行うべきことは、CRMを導入する目的を明確にし社内各部門と連携をとることです。
これは、Web担当者個人であれば前述したとおり「どの広告からのお問い合わせが成約に繋がったのかを分析する」だけで充分かもしれません。しかし営業部にとってはそれでは不十分で、SFA(Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)の略語)のような機能をほしいと考えるかもしれません。
(※SFAで出来ることを例に出すと、どの営業マンがどの程度契約を取ってきているか、どの案件が現状どのステップか、不成約に終わった場合の理由などの営業支援が出来ます)

例で営業部を出しましたが、各部門によってシステムを導入する際に要望がある可能性があります。
過去に私が遭遇した例でいうと、CRMだけマーケティング部で導入するつもりが最終的には、営業部・経理部を巻き込んだ大きなプロジェクトになったこともあります。

よって、まずは各部門と連携しいわゆる要件定義をする必要があります。
ビジネスモデル全体を書き出して、どの段階でどのような処理が必要なのかをテキストだけでなく、図とすることでわかりやすくなるので、おすすめです。

どのシステムを導入するのか?

社内にエンジニアを抱えているのであれば、フルスクラッチ(0から専用のシステムを制作する)も検討に値すると思いますが、ほとんどの企業ではそのような人材はいないと思います。なので今回はフルスクラッチでの制作は選択肢から外します。

そうなると外部の協力会社にシステム構築を依頼するか、既存のCRMやSFAといったサービスを導入するかになります。
外部の協力会社にフルスクラッチでシステム構築を依頼するのは、確実に高額な費用がかかります。よって、今回も選択肢からは外します。※ただし、外部の協力会社に後に述べる既存のCRMやSFAサービスの導入支援をしてもらうのはありだと考えます。

消去法ですが、既存の販売されているCRMやSFAを導入するのがもっともスタンダードなやり方です。
ここでは、どのようなサービスがあるのか紹介し、その中でおすすめするシステムにも言及したいと思います。

Salesforce(セールスフォース)

まず最も知名度の高いところでいうとセールスフォースが出てくるかと思います。
セールスフォースは世界的な企業で、その利用企業数も15万社という世界でナンバー1と言えるシステムでしょう。
拡張性も高く、MA(マーケティングオートメーション)との連携やメルマガ配信機能など、CRMやSFAとしてだけでなく様々な拡張機能を追求することが出来ます。

ただ、やはりお値段の方がお高めです。
またセールスフォースエンジニアという肩書をもつ人間がいるほど、開発には技術力も必要となってきます。
そうなると外部のシステム会社に発注することとなり、費用対効果の面で疑問が生じるようになります。

まとめると機能面・拡張性ではオススメできますが、価格面と開発難易度ではオススメできないというのが正直なところです。

セールスフォース公式サイトはこちら

KINTONE(キントーン)

こちらはサイボウズ社が提供している業務改善プラットフォームです。
簡潔にいうと、そこまで専門的なプログラミングスキルがなくてもアプリケーションを作成することが出来るシステムです。(複雑な連携にはプログラミングが必要)

その作成できるアプリケーションの中に、CRMやSFAも含まれます。
価格も月額8,250円(税込/5ユーザー)と、そこまで負担になる金額ではないと考えます。

拡張性もセールスフォースほどではありませんが、プラグインやAPI連携が出来るのでセールスフォースほどではないにしろ充分です。ただし、API連携など難しいことをしようとすると、ある程度のスキルを必要とされますのでご注意ください。

まとめると機能面・拡張性・価格面はオススメできます。開発難易度も高くはありませんが、やりたいことによっては専門の外部会社または、ある程度のスキルを持った人材が必要となるでしょう。

KINTONE公式サイトはこちら

ZOHOCRM

ZOHOCRMは、無料版もあるCRMシステムです。
有料版になると、かなり高度なことが出来るようになり、SFA機能も追加されていきます。
有料版には、グレードがいくつか存在し月額料金が高くなるほど出来ることも増え、MA機能や分析機能などが追加されていきます。かゆいところに手を届くようにするには、エンタープライズプランの月額4,200円(1ユーザー単位)が良いと思われます。

ZOHOの別種サービスとの連携や、API連携、Googleやマイクロソフト、その他の他社システムとの連携にも対応しているので、拡張性も高いと考えられます。既存でなにかシステムを使用していてもZOHOCRMと連携可能であれば、かなり有力候補になると思います。

まとめると機能面・拡張性はおすすめです。価格もKINTONEとの比較になると思いますが、プランによっては良いかと思います。開発難易度はこちらも望む機能によって外部会社または、ある程度のスキルを持った人材が必要となるでしょう。

ZOHOCRM公式サイトはこちら

ちきゅう

ちきゅうは、業績向上を実現できる営業管理ツール(SFA/CRM)No.1に選ばれた実績を持つシステムです。
機能面では、どの商談が現在どのステップにいるのかがひと目で分かるかんばん方式を採用しており、みやすさやわかりやすさに特化していることが伺えます。
フォーム連携もされており、自動でお問い合わせ内容を取り込むことが可能です。

しかし機能の連携面でやや競合と比べると劣り、ある程度やりたいことをするには月額49,800円(税別/10ユーザー)となることから、価格面でも競合と比べるとやや高く感じます。

ただ、ドラッグ・アンド・ドロップでカスタマイズ出来るようなシステムなので、導入難易度は低いと思われます。
30日間の無料体験もあるので、そこで技術者無しで導入できることを確認できれば、値段相応の効果を期待できるのではないでしょうか。

ちきゅう公式サイトはこちら

その他のCRM/SFA

その他のCRM/SFAとしては、SensesPipedriveUPWARDなどがあります。
詳しくは、「CRM カオスマップ」等で検索してみると、様々なシステムが存在することがわかると思います。

結局はどのシステムを選ぶべきか

私個人のおすすめとしては、KINTONEがいろいろな状況に対応でき、なおかつ安価だと思うのですが、javascriptというプログラミング言語がわかる社員がいることが前提となってしまいます。

金銭的な余裕があるのであれば、セールスフォースにしておけば間違いないと思いますが、エンジニアと雇うもしくは外部開発会社とメンテナンス契約を結ぶなどを考えると、費用対効果の面で導入するべきか疑問が生じてきます。

であれば、ZOHOCRMなのかちきゅうとなりますが、こちらも一長一短あります。
最終的に明言できなくて申し訳無いのですが、やはり会社ごとの状況によって導入すべきシステムは異なるという結論になってしまいます。
なので、まずはどのシステムも試用することが出来ますので、実際に触ってみること。そして、問い合わせをして直に話を聞いてみることが重要になってきます。そのうえで、長所・短所をまとめて自社の要件に合うものを導き出し社内プレゼンに臨むのが良いと思います。(私もそうしました)

システム導入時・導入後に気をつけること

まず基本にしなくてはいけないのは、知識レベルが社員によって異なるという理解です。
20代であってもIT系に弱い社員もいれば、50代でもIT系に強い社員もいるでしょう。

導入にあたっては、一番IT系スキルが低い社員に合わせて考える必要があります。
全社員が問題なく使えなければ、会社として致命的なエラーに繋がる可能性があるからです。
よって専用のマニュアルを作るのは当たり前として、その内容も一番ITスキルの低い社員でもわかるように作成するのが理想です。

何でも横文字にするのは好きではないのですが、「エバンジェリスト」という言葉があります。
以下、引用となります。

エバンジェリストとは、IT業界で近年注目を集めている新しい職種のことです。 もしくは、その役割を担っている専門的な人材のことです。 エバンジェリストの役割とは、最新のテクノロジーを大衆に分かりやすく解説したり、啓蒙することです。

システム導入の際には、このような役割を担わなくてはいけません。
会社に在籍する社員によっては非常に難しい任務になります。私も苦労をした経験がありますが、マニュアルのみで済ますのは非現実的なので、説明会やヘルプデスクの連絡先を周知し、丁寧に説明するのを心がけましょう。
そうすれば、社内でのあなたへの信頼度も増しますし、導入する効果もあがり一石二鳥です。

ということで、前述しましたが導入後は必ずヘルプデスク(わからないことが合ったときの連絡先)を周知しましょう。そして、そこでどのような質問があったのかを蓄積し、マニュアルを更新していくことは必須となります。
マニュアルも作りっぱなしではなく改善していくということです。改善した際は関係各所へアップデートの周知をするのも忘れずにしましょう。しっかりと運用されているというメッセージにもなり、関係各所の社員もシステムを使用しなくてはという気持ちになってくれるはずです。

大事なのは導入して終わりではなく、しっかりと会社にシステムを根付かせることです。(自分の部門だけではNG)

中小企業のIT化(CRM導入)まとめ

  • CRMを導入する目的を明確にする
  • 導入前後は社内各部門と連携する
  • どのような機能が必要か図として書き出す
  • 自社に合ったシステムを探す(相談だけは基本無料なので、いろいろな会社の話を聞きましょう)
  • システム導入後は、マニュアルを作り誰でも使用できるような体制を整え、会社にシステムを根付かせましょう